性的役割を押し付けてはいけない、これはようやくSNSの炎上や毎日のように報道されるニュースで日本の社会でも浸透しつつある動きを見せ始めました。育児を女性だけだするものだとするのも性的役割の押し付けで、イクメンという育児をする男性が珍しいから誉めているような言葉も徐々に避けられるようになってきています。一方で職場での性的役割の押し付けはどうでしょうか。
今回は、企業でも悩みの多い性的役割分業についてご紹介いたします。
営業職、出張のジェンダーギャップ
長期休みの期間以外で新幹線に乗ると、目につくほとんどの人がスーツ姿の男性であり、ビジネス目的に見える女性が極端に少ないことに気が付くかもしれません。
日本旅行年報によると出張・業務目的で宿泊を伴う国内旅行をした人の内、女性は15%しか存在しません。営業職や出張など一部の業務は極端に男性に任せられやすい傾向が日本の文化にはあります。逆にWoman typeの統計によると4割の女性が男性と比較して、お茶出し、掃除を割り当てられることが多いと感じていることがわかります。
任せる仕事が不当に偏っているせいで、男女の賃金格差や昇進の格差につながっている可能性もあると考えられます。
ジェンダーバイアスの難しさについて
仕事の割り振りをしている上司も悪意があって行っている場合は少ないでしょう。しかし、いつの間にか身についている性の役割分業に基づいた判断はジェンダー差別に繋がりかねません。
こうしたステレオタイプによる判断を抑えるのは簡単ではなく、抽象的にこういったことはやめましょうといったところでなかなか防止できるものではありません。 しかし実際は男性だから事務作業が苦手なわけでもなく、主夫向きの人もいれば、細かな作業が得意な人もいます。事務職は女性というイメージが浸透すれば、事務作業が得意な男性はどこかで男性らしくないというバイアスに苦しむことになることにも繋がりかねません。大切なのは性差よりも個体差です。
営業、出張のジェンダーギャップから考えるステレオタイプ対策
とある営業会社では、営業職は全員男性、事務職は女性が8割以上、などと暗黙の了解で決まっていると言います。そういえば、たまに会社に訪問をすると事務職員がほとんど女性で驚いた経験があります。昨今では医学部入学の男女格差がありますが、職業による採用格差もあるでしょう。営業は体力仕事と思う人もいるかもしれませんが、実は業界によってはジェンダーバランスの良い業界も多く、例えば保険業界や人材広告の営業は約半数が女性です。営業が男性向きであるというのは、思い込みや古くからのしきたりなどの場合が多いと言えるでしょう。
近年では役職のジェンダーバランス(割合)がジェンダー平等の指標として参考にされることがあります。しかし昇進できるかどうか以前にもっと若い段階から任される仕事に差異があるといえるでしょう。
男性が任されやすい仕事と、女性が任されやすい仕事があるだけで、昇進や給与にも影響が出るのです。
まとめ
こうしたジェンダーに基づいた差別をなくしていくためには、従来問題として取り上げられている例えば育休の取得率を挙げることや表面上の女性役員の割合を増やすだけではなかなか対策することが難しいという事です。
仕事の性的役割分業など細かな問題からも事例を拾い上げることで根本的な解決方法や、社会が今どのくらいジェンダー平等に対して進んでいるのかという事の指標になるように思えます。 ジェンダー平等社会へと近づくために注目するのは、役員比率だけではなく、医学部入試だけでなく、営業や事務職の採用比率にも該当するでしょう。
writer: Shoma Tokuyama
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