ジェンダーによる価値観は様々でそれゆえに対立しやすい。自分の考えが一番であるという思い込みも発生しやすい。それぞれのジェンダーの価値観や悩みを知ることで、多くの価値観を需要でき尊重しやすい社会を目指す。どうしたら対立しないで分かり合えるのか。このプロジェクトでは、それぞれ生まれ持った性や人種を尊敬し合うために、それぞれの価値観を知ることを目的としています。
今回は一般社団法人パートナーシップ協会のデザインも担当してくれている、フリーデザイナーの倉本さんにジェンダーの価値観を聞いてみました。
ー倉本さん自己紹介をよろしくお願い致します。
倉本恵太です。静岡県出身です。現在はフリーでデザイナーをしながら洋服屋さんでアルバイトをしています。趣味はお絵描きやひとりカラオケに行くことです。絵が上手く描けたら楽しそうだと思い、高校の頃から美術を学び始め大学でもデザインを専攻していました。絵やデザインという言葉を超えたコミュニケーションの技術を手に入れたことで、様々な視点で物を見ることができるようになりました。
身体的な性別は男性ですが、中身の性別は特に決めていません。一応、自分を「ジェンダーニュートラル」と自称しています。私は日頃自分を男か女か性を決めることはなく、生物的な性差は受け入れつつも、内面の性はその日その時の気分によって移ろっていいものだと思っています。
昨今、Queer(クィア)やジェンダーレスなど微妙な性別に対する呼称も広がっています。しかしそれもまた一つの便宜上の決めつけでありバイアスのようなものを感じてしまい、あえて性別に対してニュートラルであると表現しています。そうすることで、内面の移ろう「性」を許容できると感じています。
ー社会に出るまでの過程でジェンダー平等について悩んだことはありますか
恋愛といえば男女の恋愛がスタンダードとされ、それを取り扱ったコンテンツも多数存在しています。そういったいわゆる”普通の恋愛”ができない自分に疑問を抱いていました。恋愛は自然発生的にするものと描写されがちですが、なぜ自分にそれが芽生えないのか少し悩んだ時期もありました。
ー社会に出て、ジェンダー平等について悩んだことはありますか
就職活動の時、働く身なりとして男は男らしく、女は女らしくという容姿が求められる場面があり少し辟易としていました。採用時は志望者の個性を求めても、入社後は組織から容姿的にも外れることのない統一性を強く好む傾向があることにギャップを感じました。
自分はまず男でも女でもない「等身大の自分」を受け入れてくれる場所を探していました。
※出勤前の倉本さん
人間は男か女かである以前に、この地球上に暮らす一種の生物に過ぎません。そんな中でたまたま生まれた性に合わせた容姿を求められることに違和感を感じることがあります。
男女で生理的な違いがあることは当たり前のことで、社会活動を行って思いやりを図る人間として、その生理的や体格的な違いを考慮するのは当然だと思います。性別ではなく、自分の人柄・実力で評価してもらえる環境を作っていくのが大切だと思います。
居心地がいい、等身大の自分でいられると思った関係を大切にするように過ごしています。
ー自分の性について感じる欲、悩みなどはありますか
自分の体は男性ですが、女だったらいいなと思ったことは何回かあります。身体的特徴として髭が生えたり声が低くなることが嫌だったり、仲がいい女性と接していて、同性だったらもっと分かり合えることも多かったのかなと思ったりしたこともあります。
自分の場合、男であることを理由に「できることをしない」のは生きていく上ですごいもったいないなと思いました。
※自分が宇宙人であるテーマに撮った作品
例えばメイクするとか、長い髪でヘアアレンジをする、ネイルをする、スカート・ワンピースを着る、ヒールのある靴を履いてみるとか、やりたいのであれば心に従いやったほうがいいと思います。高校生の頃は校則が厳しく、男がそれらをすることは難しい環境でしたが、自由な大学生の頃は4年間ほぼ毎日メイクをして登校して、身なりにも気を使って過ごしていました。やってみると、今まで見えなかった新しい視点が見えるようになり、女性と話していて共通項のある話題も圧倒的に増えたなと感じています。結果的に、日々の生活を楽しむことができ、今の自分も面白いと思えるようになり満足しています。
ー周囲の人とジェンダーの価値観が異なると感じたことはありますか。
話すときに異性愛者を前提として話されたり、男か女かの振る舞いを決めることを求められたりする場面もよくありました。また、ジェンダーの違った価値観の人であると少し遠慮されることもたまにあります。自分が世間一般とは少し違った価値観を持っていることは理解していて、悪意がないと感じればその人の考え方に合わせてお話します。考え方や先入観みたいな物は十人十色でありそれもまたその人の個性であると認識しているため、相手のことは最大限尊重しながら、自分を溶け込ませていけるように心がけています。
ただもう少し思うことは、いろんな人の曖昧な価値観に対して許容範囲が広がればいいなと思います。それは他人に対しても、その人自身に対してもそうだといいなと思います。観念的なもので自分の性格とか考えを決めつける必要はなくて、自分の中に生まれた素直な感情を悪意なく伝えられて、相手もそれを悪意なく受け取れる環境が少しでも多く作れたらなと思っています。
ーこれからの社会にジェンダー視点で期待することはありますか
職業において「男らしく女らしく」という固定概念(バイアス)がなくなればもっと働きやすいと思います。例えば、給仕係は女性の仕事、ガテン系は男性的である、などです。どんな仕事を選ぶかどうかもその人となりを作っていくものだと思います。余計な先入観をなしに好きな仕事で社会に貢献できればもっと生産性も向上して、結果的にいろんな立場の人を許容できる世の中になるのではないかと思います。
ーありがとうございました。
倉本さんの人柄と誰に対しても敬意を表して接する「対等」な対応を心掛けている姿がまぶしく写りました。ジェンダーに関しての価値観は十人十色。どの価値観が正しいという押し付けではなく、それぞれの価値観を受容できると、人生はもっと楽しく輝く。
男女ではなく、「人として接する」という姿勢は職場でも教育の現場でも活かせるのではないでしょうか。男だから~だろう、女だから~だろう、ではなく、人として接することで、自分自身も性の呪縛から解放されるのかもしれません。
多様な価値観を受け入れること、尊重すること、人を対等に接することは、他人を許容できる人を増やす第一歩かもしれません。学ぶことが多くあった今回のインタビュー、皆様はいかがでしたでしょうか。
次回もお楽しみに!
出演:倉本恵太
取材:一般社団法人パートナーシップ協会スタッフ