SNSでだれでも情報発信ができるようになり、リアルのコミュニティや考え方にも大きな影響を及ぼすようになりました。ひと昔前では考えられない規模の不特定多数の人間との関係についても生成されていき、全く違う価値観の人々との関りも生まれてきています。一方でSNSは使い方を間違えれば企業のリスクにもなり得ります。
今回はSNSとジェンダーについてどのような関係が起こり、注意しなくてはいけないのかといった問題について最新の事例を紹介しながら、今後の企業の対策について考えていきます。
ジェンダー問題の炎上はなぜ起こる
ジェンダーについて最も議論や規制が激しく行われる分野の一つが広告です。イギリスではジェンダーバイアスを加速させるような広告が規制され、日本でも様々な広告がジェンダーについて議論や批判を引き起こしました。また、SNSは口コミ的効果も合わせながら効果的に拡散していく広告ツールとして非常に親和性が高く、密接な関係にあるといっていいでしょう。また、広告目的に限らず一般のアカウントでもインフルエンサーになって大きな影響力を持ちえるというのも特徴です。
多数の人々に影響を与えるような発信は特にジェンダーバイアスを悪い方向にも加速させうるため、ジェンダーバイアスに敏感になっている人が多いのです。
企業とSNS
特に企業関係のアカウントなどは厳しい目で見られることが多いのはわかりますが、かといってどういったものが問題視されるのか直観的にわからないという方も多いのではないでしょうか。また、炎上対策など社員教育の一環でSNSの使用について考えているもののジェンダー関係はどのようにすればよいのかわからないといったことも多いようです。
企業の果たすべきCSR(社会的責任)としてもジェンダー平等に考慮しなくてはいけなくなっている中でそういった悩みを持つ企業は増えていきます。そういった場合はどのような対策が考えられるでしょうか。
最新!SNS炎上事例
・英コスメブランド・ラッシュ
英コスメブランド・ラッシュは2021年11月26日から、世界48の国・地域でフェイスブックやインスタグラム、ティックトックなどの一部SNSアカウントの利用を無期限停止することを発表しました。ラッシュはこれらSNSサービスの運営が、いじめやフェイクニュースなど若者を中心とした心身への影響が深刻化しているにも関わらず対処していないなどを理由に利用を停止することを決定しました。
SNSの使用による炎上とは少し違いますが、SNSの利用やその運営団体への非難を込めるという少し珍しい切り口の問題提起ではありますが、防衛能力の低い子供の利用が大きい中で確かに必要な観点といえるでしょう。
ラッシュが掲載した画像:掲載元ラッシュ
・料理番組で炎上
海外のとある料理番組の宣伝資料の写真において男性が青、女性がピンクのクリームを持っていた。これが従来の性別と色を結び付けて考えるバイアス的な思想を反映しているとしクレームを集め、ニュースになりました。その後、番組側は訂正を行いました。
日本では現在、例えばトイレで男女を指し示すロゴにおいて赤(ピンク)や青が象徴的に使われていることが多いです。そういったことからも現状これが日本で問題として即座に批判される可能性は低いかもしれません。しかし、その感覚は年々進んでおり、数年後には問題になっていてもおかしくないでしょう。こういった特に先鋭的な批判がどのような場合に行われているのかといったことを把握しておくのは自衛としても重要なはずです。
事例から考えること
性別に色をつけることは、確かにバイアスを強化します。一方でそもそも人間からバイアスを消し去ることは不可能です。その上で何が“不適切”なバイアスといった概念について考える必要があるでしょう。つまり、バイアスをすべて否定するのではなく「その表現は誰にとって不利益をもたらすようなバイアスを加速させるのか」という部分が成立している必要があるといえるのではないでしょうか。また、それに伴いどの程度規制を設けるべきか、基準が必要とされてきます。
例えばイメージカラーについていえば、家事は女性が行うものといった社会的立場の固定を呼び込むほど大きいものではなく、あくまで嗜好やイメージにとどまるものです。(もしかしたら、タキシードとドレスなどに派生しているかもしれません)
私の感覚ですが、そうした象徴的なイメージに負の側面が少ない場合そこまで躍起になって抹消していく必要はないように思えます。ただし、例えば広告などバイアスを加速させるような部分では少し敏感になって、また「男性といえば青」以外の魅力的なさまざまなイメージが許容できるような気づかいや表現を楽しめる人が増え評価できる社会を目指していくのが良いように思います。
SNSとジェンダー問題の対策について
SNSでジェンダーに関する炎上を避けるためには個人にせよ企業にせよ、どういった考えや表現が問題視されているのかという事について知識をつけるしかありません。
その方法として教育担当の人事がセミナーなどで学びマニュアル化して社員教育を行うことや、個人なら学校や家庭での教育や独学で学ぶことが考えられます。
ライター:SHOMA TOKUYAMA
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